【第12回】名作昔話『ねこの大王』で味わう、物語に「翻弄」される快感
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名作昔話を掘り下げる、第12回目は、

イギリスの昔話『ねこの大王』

をお送りします。

 

昔話の定義に、

基本的に「時間軸」が真っ直ぐである……

というのがあります。

 

昔話には、

「ここでいったん、昨日の話に戻ります……」

なんてことはありません。

 

 

今回の話も、ほぼその法則にのっとっているのですが、

ただ、ちょっとだけ、時間軸に工夫があります。

 

それだけに、このお話は、あまり「語り」には向いていません。

(少し理解に手間取るかも知れません。)

 

しかし、昔話独特の雰囲気を持ちながら、

少しだけ時間軸に趣向を凝らしている、この不思議なテイストを、

ぜひとも、たくさんの人に味わって欲しいと思います。

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今回ご紹介する話は…

↑この中に収録されています。

このストーリーのモチーフ(発想の原点)

家で飼っているネコが、

実は、ねこの大王だったら……。
 

おそらくこの作品は、これくらいのモチーフでしょう。

では、次に行きましょう。

物語の『天・地・人』

天(時代・世界設定)
・イギリスの昔
(当然「昔話」なので、ファンタジー要素が強い世界観です。)
・ある冬の夜
地(物語のスタート地点)
家の中
人(主人公および登場人物)
・墓掘り
・おかみさん
・黒ねこのトム

あらすじ(物語のおおまかな設計図)

おかみさんと、黒ねこのトムが、

家の主人である“墓堀り”の帰りを待っていると、

墓掘りが帰ってくる。



墓掘りは、帰ってくるなり

「トム・ティルドラムって誰のこと?」と聞きます。

そして、この日、墓で起きたことを語り出す。



語り終わると、黒猫のトム

「チム・トルドラムが死んだのなら、ねこの大王はオレだ!」

と言って消えてしまった。
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起承転結は?


おかみさん黒ねこトムの待つ家へ、帰ってきた墓掘り

「トム・ティルドラムって誰のこと?」

承❶

墓掘り:「今日、仕事中に居眠りして、ねこの声で目覚めたんだ」

黒ねこのトム:「ニャーオ!」

承❷

墓堀り:「棺桶を運ぶ9匹のねこを見たんだ」

黒ねこのトム:「ニャーオ!」

承❸

墓掘り:「ねこどもがオレに近づいてきたんだ」

黒ねこのトム:「ニャーオ!」


おかみさん:「トムをごらん!」

黒ねこのトムは、みるみるふくれ出す。


黒ねこのトム:「それじゃあ、オレがねこの大王だ!」

そう言ってトムは消える……。

 

普通に読むと、(聞くと、)

この話に出てくる「3の要素」には気付かないかも知れません。

 

ですが、

黒ねこのトムが意味ありげに「ニャーオ!」と泣くのは、

きっちり3回です。

 

それがそのまま

承①〜承③に当てはまり、

比較的、きれいな

 
「起」→「承①」→「承②」→「承③」→「転」→「結」
 

となっています。

このストーリーのポイントは?

冒頭で語った通り、

この話では、時間軸の扱いに少し工夫が見られます。

 

家に帰ってきた墓掘りは、

その日あった不思議な出来事をおかみさんに向けて喋り、

黒ねこのトムも、それを横で聞いています。


お話の半分近くは、

墓掘りが語る「その日の昼(過去)」の話。

 

それとリンクして「現在」が語られています。


物語設定として、まず大きなポイントは、

主人公が“墓掘り”という気味の悪い仕事だということ。

 

……いかにも、何かが起きそうな気がしますね。

 

そして、家で飼っている黒ねこに

トムという名前がついていて、

冒頭から存在感たっぷりに描かれていること。

 

……これも、いかにも、何かが起きそうな気がしますね。

 

黒ねこのトムは、案の定、墓掘りの話を聞きながら、

意味ありげに「ニャーオ!」を繰り返します。


このコーナーで何度も説明しているように、

昔話には、よく「3の要素」が出てきます。

 

そしてそれは、

物語を“予想”させるためのリズムです。

 

1でコトが起こり、2でもう一度コトが起こり、

この時点で、「点」「線」になり……、

 

その線をたどり、物語の行く末を予想したところで……、

3で、ドンッ!と何かが起き、

 

それを受けて、最後に何かしらのオチを迎えるわけです。


読者に、(聞き手に、)

「物語の先を予想させること」はすなわち、

「物語に集中させること」

です。

 

墓掘りが昼間出会ったという9匹のねこのエピソードと、

トムの「ミャーオ!」という鳴き声のリンクが、

3のテンポの中で小気味よく語られ、

 

「この先何が起こるのか?」

「何かが必ず起きるはずだ!」

 

というワクワクを演出しているわけですね。

 

※ちなみに、この“予想”は、予想どおりになってもいいし、

大きく予想を裏切っても構いません。

……どちらでも、面白いのです。読者(聞き手)にとっては。

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このストーリーの伝えるメッセージは?

このお話は、

壮大なバックグラウンドを感じるお話でもあります。

 

とりあえずは、こんな感じでしょう。↓

 
ねこの国があって、

そこにはねこの大王がいて、

ティムとトムはかつて、王座を争っていたわけです。



王座争いに敗れたトムは、人間の飼い猫に身をやつして、

いつかティムが死ぬのを待っていた……。
そして、ついにティムの死を知る場面が、

このお話で語られるエピソードです。

 

9匹のねこの儀式的な不思議な動き、

棺桶の上に乗せられた冠、

9匹のねこの胸には皆、白い印、

緑の火のように燃える目……

 

これらはすべて、このお話が単に、

短く完結するものではないような雰囲気を漂わせています。

 

ですが、これも、すべてテクニック

 

「そんな壮大な話があるんだったら、その話も聞きたい!」

と思うのもいいでしょう。

 

……でも、そんな壮大な話が、なくてもいいんです。

 

よく分からないから、

不思議だから、未知だから、面白いんです。


このお話、

人を食ったようなところもある、語り口ですが、

こうやって、翻弄されるのもまた、

昔話を読む(聞く)楽しみでもあります……。


昔から伝承されている話なのに、

このように、シンプルながら緻密な演出がなされているところに、

人間て本当に、「ストーリー(物語)」が好きなんだなぁ

ということを思わずにいられません。

 

というわけで、

今回はイギリスの昔話、『ねこの大王』をご紹介しました。

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