【第8回】名作昔話『かしこすぎた大臣』から学ぶ、人の気を引き続ける「起承転結」展開
Pocket

名作昔話を掘り下げる、第7回目は、

インドの昔話『かしこすぎた大臣』

をお送りします。

 

こちらも前回と同じく、

昔話ですが、“再話者”の名前がハッキリとしている話です。


再話者がどのような趣意で、話を整えたのか、

そのへんにも思いを巡らしながら、深掘りしていきましょう。

Sponsored Link

今回ご紹介する話は…

↑この中に収録されています。

このストーリーのモチーフ(発想の原点)

どんな時代にも、有力者にコバンザメのようにまとわりついて、

おいしい汁を吸い続ける人間っているよね。

そんな人間は大抵、表面的には、

「あなたを尊敬しています」、「あなたについていきます」
とか言いながら、裏ではその人を馬鹿にしてたりするんだよ。
 

物語が生まれる一番最初の材料(モチーフ)って、

「世の中って、こうじゃない?」

という想いや、ひらめきのことです。

 

でも、そうしたひらめきは、

物語にしないと、人が見てくれません。感じ取ってくれません。

 

こういったもの(モチーフ)に、

少〜しずつ肉付けをしていくことで、

物語というものは作られていくんですね。

 

……そうすることによってモチーフは、

ありのままのメッセージを隠し、

“テーマ”として、物語の中で息づいてきます。

物語の『天・地・人』

では、基本設定を抑えていきましょう。

 
天(時代・世界設定)
インドの昔
(あくまでも「昔話」なのでファンタジー要素は強い)
地(物語のスタート地点)
ある王様の城
人(主人公および登場人物)
王様と側近の大臣

あらすじ(物語のおおまかな設計図)

主人公の大臣は、いつも王様のそばで、
「自分がどれだけ頭がいいか」を、王様に対し印象付けていた。

 

王様はこれを真に受け、実際、

「こんな大臣が仕えてくれている自分は何て幸せなんだ」

と思っていた。

 

でもこの大臣は、王様に親切にするふりをして、実はやりたい放題だった。

を教えて、自分の嫌いな人に罪を被せたり、
王様のお金をネコババしたり……。

 

ある時、自分が罪を被せた人から、命乞いをされた大臣は、こんな嘘をつく。

 

「王様、今日は特別な日です。今夜こやつを殺したら、こやつは天国に行ってしまいます。罪人を天国に行かせてどうするのです?」と。

 

王様は実は、かねてから天国に行きたいと思っていた。

「大臣、一緒に天国へ行くぞ。まずはお前から行け」

……大臣は、殺されてしまう。

Sponsored Link



起承転結は?


王様大臣登場。

王様と大臣の関係性を説明。

王様は、大臣に絶大な信頼を置いている。

大臣はそれに対し、

「どこへでもあなたについて行きます」と忠誠を誓う。

でも、この大臣はしたたかなやつ。これらはぜんぶ彼の作戦(嘘)。

承❶

ある時、道でキツネが鳴く。

王様:「あれはなぜじゃ?」

大臣:「キツネは寒がっているのです。キツネの毛布を奪ったものがおります」

王様:「その者を殺せ。そしてこのお金でキツネに毛布を買ってやれ」

大臣、自分の嫌いな人物を葬り、お金も着服……。

承❷

キツネはまだ鳴いている。

大臣:「あれは王様に対して感謝しているのです」

そこへイノシシが現れる。

王様:「これは何じゃ?」

大臣:「これは痩せこけた“ゾウ”です。飼育係がさぼっているのです」

王様:「その者を殺せ。このお金で餌を与えよ」

大臣、またも、自分の嫌いな人物を葬り、お金も着服……。

承❸

道へまたイノシシが現れる。

大臣:「これは城の食料を食い荒らしたネズミです」

王様:「では料理番を殺せ」

料理番:「大臣、お金をやるから、何とか私を助けてくれ」

大臣:「私に任せておれ……」


大臣:「王様、待ってください。

今夜、首をくくられた人間は天国へ行ってしまいます。

こんな悪党を天国に送ってはなりません!」


王様:「わしはかねてから天国へ行きたかった。

お前はずっとわしのお供をする言っておったな?

わしは天国へ行きたい。

そちに道案内を頼む。では、先に死ねぃ」

大臣は自分の策におぼれ、命を失うことに……。

王様自身も、天国に行こうとして死んでしまう……。

このストーリーのポイントは?

前回も触れましたが、

昔話には、よく“3の要素”が使われます。

 

この物語にも、実にうまく3の要素が使われています。

それも、鎖のようにしっかり繋がれた「3」です。

 

まず、承①で、キツネの毛布を買うためのお金を着服し、

大臣の本性はいきなり全開します。

 

そして、承②の冒頭で、それがバレそうになるも……

しかし、それをうまく乗り切り……

またも着服……。

 

承③の冒頭、またも承②で着服したお金のことがバレそうになるも……

大臣は、これまでとまったく同じ流れで、うまく乗り切る。

しかし、今度はここで新展開。

罪を被せられた料理番が、大臣に取引を持ちかけてきます。

「あなたにお金もやります、さらに、王様と同じ料理を食べさせてあげます」と。

 

…そして、で、

大臣が自分の身を滅ぼす嘘をついてしまうのですが…。

 

この物語の承①〜③のポイントをしっかり抑えておくと、

つまりは、こういうことです。

 

最初から、「あやしいやつ」として描かれていた大臣が、
しっかり、悪さを働く承①
(予想通り)
⬇︎

「大臣の嘘がバレるのか?」と思ったら……
なんと、バレない承②
(驚き)


⬇︎

「大臣の嘘がついにバレるのか?」と思ったら……
なんと、やっぱりバレない承③
(なーんだと思うと同時に、大臣が懲らしめられることを願う読者)


 

コレ、実によくできています。

読者(聞き手)の気持ちをず〜っと、鷲掴みのまんま、

最後まで持っていってます。

 

予想させ、その予想を裏切り

でも、最後には、読者がちゃんと望む通りの結末を迎えます。

 

(王様が実は賢くて、わざと騙されていた……という展開はなく、最後、本当に死んでしまうのは、ある意味、衝撃ですが、何とも言えない読後感が、逆に気持ちいです……。)

Sponsored Link



このストーリーの伝えるメッセージは?

この物語は、

とにかく“筋”が、ものすご〜く緻密にできていますが、

 

あまり

“メッセージ性”はないように思います。


いくら何でも、

「そんな嘘つき大臣を信じてしまう王様も同罪だ。同じ目に遭っちゃえ!」

なんていうメッセージはありません。

 

しかし、(再話者がいるとしても)この物語が、

純粋な創作物ではなく、古来から人々の口から口へ伝承してきた話

だということ自体に、何か希望を感じます。

 

「人の気を引くテクニック」がこんなにも洗練された形で、

ず〜っと受け継がれてきたんですね。

 

それぞれ、大きな悩みや小さな悩みを抱えながら、

また、人間関係に苦しみながら、

日々生きている人間ですけど、

 

世代や時空を超えた、大いなる知性からすると、

たぶん、かわいいもんなんですよ。

 

代々受け継がれてきた昔話に、

こんなにも見事に、感情を手玉に取られちゃうくらいですから……。

 

……そんなふうなことを思ったりします。


……というわけで、

名作昔話を掘り下げる、第7回目『かしこすぎた大臣』でした。

何らかのお役に立てば幸いです。

Pocket

こちらの記事もおすすめ