【第6回】名作昔話『3人兄弟』から学ぶ、スピーディーなストーリー展開のポイント
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名作昔話を掘り下げる、第6回目は、

フィリピンの昔話『三人兄弟』をお送りします。

 

これは、フィリピンの地で伝承されてきた昔話には違いないんですが、

再話者の名前もしっかり刻まれている話なので、

 

その再話者の意図により、

「この物語から、何を感じて欲しいか?」

が、よりハッキリと浮き上がっている話ですね。

 

……そのへんも踏まえて、深掘りしていきます。

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今回ご紹介する話は…

↑この中に収録されています。

このストーリーのモチーフ(発想の原点)


農業の基本って土地管理だよね。でも、土地の管理って大変。

どんだけがんばっても、天候に大きく左右されるし。

だから農業って、まさに儲からない職業の典型

……でも、

人にとっての“財産”って、最終的には「土地」しかないよね……。

 

この物語を“再話”したのは、

セルソー・カルヌーガンという人です。

「この人が、この話の何に重点を置いて、再話したか?」

……そんなところにも注目しながら、以下の要素を見ていきましょう。

物語の『天・地・人』

天(時代・世界設定)
フィリンピンの昔
(あくまでも「昔話」なのでファンタジー要素は強い)
地(物語のスタート地点)
ある田舎。畑を持つ百姓の家。
人(主人公および登場人物)
母と3人の息子
 

物語を設計していく時に、

まず決めなくてはいけないのが、この3要素です。

 

「天」に関していうと、

昔話の場合は「昔話というジャンル」ですから、

出だしの「むかしむかし……」だけで、何となく掴んでもらえる、

という利便性があります。

あらすじ(物語のおおまかな設計図)


百姓の3人息子は、みんな農業が嫌い。

父が亡くなると、母は、3人の息子を旅に出させる。


7年後、

息子たちは、それぞれの職能を身につけて家に帰ってくる。

ちょうどそんな時、

王国の王女が魔法使いにさらわれるという事件が起きた。


3人は力を合わせて、王女を救い出すと、

王様から、国の半分の土地をもらい受けた。

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起承転結は?


が死に、は、3人の息子を旅に出させる。

(3人とも百姓仕事を継ぐのを嫌がるから。)

承❶

7年後、息子たちは家に帰ってくる。

それぞれ、「ガラス職人」「船大工」「泥棒」。

承❷

王女がさらわれたことを知ると、

1番上の息子が作った望遠鏡で王女の居場所をつきとめ、

2番目の息子が作った船に乗って、

3人で救出に向かう。

承❸

王女がとらわれていたのは怪物だらけの島。

しかし、3番目の息子“泥棒”の技術で、

難なく王女を“盗み出す”ことに成功。


王女を国へ連れ帰ると、ひとつ問題が起きる。

王様は3人のうち、誰を王女と結婚させればよいのか分からない。


王様:「王女は3分割できない。その代わりにお前たちに土地をやろう」

3人、大喜び。

このストーリーのポイントは?

昔話には、よく“3の要素”が使われます。

それは、エピソード3回の繰り返しだったり、

人数であったりですね。

 

この話の場合、

主人公が、本当は1人でも成り立つのですが、

能力が3人にそれぞれ分散していることで

エピソードの進展にスピード感爽快感が出ています。

 

これが2人兄弟だと、ちょっと変わってきます。

 

人間は、2という数字には、自然と「対比感」を求めます。

 

それは、たとえば、

2人が相反するような能力だったり、

お互いを補い合うような能力だったりすると、

しっくりくるような流れですね。

 

一方、

3という数字で抱くイメージは、「バラエティ感」なんですね。

 

この物語の場合、

3人目が「泥棒」という意外な職業に就いて戻ってくるのですが、

1人目、 2人目を見せると、“点”“線”になり、

その先を人は、「予測」できるんですね。

 

(つい、予測しちゃうんです。)

そうなると、

その予想を裏切ってもいいし、

あるいは、その予想通りになってもいい。

 

どちらであっても、人は、「面白い!」と感じるんです。


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このストーリーの伝えるメッセージは?

この物語で興味深いのは、母親の名前は、アナ、

3人の息子たちはそれぞれ、

タショー、ビンドイ、カストールと決まっているのに、

父親の名前だけないんです。

(まぁ、冒頭で死んでしまうのですが。)

 

そして、この物語の意図として、最初に打ち出したいのは、

この3人の息子が「農業が嫌い」だということ。

 

父親の存在に深く触れてしまうと、

父親の考え方なり、哲学が出てきてしまい、

そこで“議論”が始まってしまいます。

 

だからおそらく、

読者(聞き手)を物語の流れに没入させるため

わざと、父親には深く触れていないのですね。

 

完全に「母と3人の息子の話」として作られています。

 

再話者としては、

「農業を軽く見てはいけないよ」

「土地こそ、宝なんだよ」

と、美しいメッセージを浮かび上がらそうとしているように感じます。


……ですが、

ちょっと皮肉を言わせてもらうならば、

 

この3人は、

結局、土地という権力を手に入れ、小作人を雇って、

「自分が楽をしながら稼ぐ」

という道に行き着いていますよね?

 

……そんなに美しくはないです。(^_^;)

 

人を雇って、自分の額に汗をかかずに儲けるのなら、

別に農業じゃなくても、他の産業でも成り立ちます。

 

再話者は、ここもちゃんと分かっている上で書いているのか、

そこは不明です。

 

(泥棒という職業が出てくるあたり、

もしかしたら意識はしているかも知れませんが……。)

 

ただ、私のような昔話好きとしては思うのです。

人の暗部に目を向けた昔話も、それはそれで面白いです。

まさに「清濁、併せ飲む」ってことです。

 

自分で農業をするにしても、

地主になって、小作人にさせるにしても、

それを何に変えるかというと、結局、お金


この3人は王様から、たくさんの「お金」をもらっても、

幸せだったわけですけど、

これだけテンポのいいストーリーで語られると、

モヤモヤより、爽快感が勝っちゃいます……。

 

この、何というか、しのごの言わせない、

しのごの言えなくなっちゃう……短さ完結さ潔さが、

また、昔話の魅力でもあります。

 

……というわけで、

名作昔話を掘り下げる、第6回目『三人兄弟』でした。

何らかのお役に立てば幸いです。

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