【第2回】名作昔話『旅人馬』に見る、人生の目的の見つけ方
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名作昔話を掘り下げる、第2回目は、

『旅人馬(たびびとうま)

をお送りします。

 

これも面白い話なんです。

もう、人生が丸ごと濃縮されているような話です。

それではスタート!

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今回ご紹介する話は…

↑この中に収録されています。

このストーリーのモチーフ(発想の原点)

主人公はパートナーと一緒に旅に出る。

ところが、そのパートナーが不思議な“事故”に遭ってしまい、

そこから、動けなくなってしまう。

主人公はパートナーを救うために、世の中を駆けずり回り、

ようやく救う手立てを見つけ出すと、

ついにパートナーを救い出す。

天(世界観)・地(場所)・人(登場人物)

・「日本のむかし」
・「宿屋」
・「貧乏人の子」

あらすじ(物語のおおまかな設計図)

金持ちの家の子と、貧乏人の子が、遠いところへ2人で旅に出る。

宿での夜、

貧乏人の子が囲炉裏のある部屋を覗くと、

宿の女将が不思議な術で、モチを作り出した。

翌朝、そのモチを食べた金持ちの子は、

馬になってしまい、その宿でこき使われることに……。

逃げ出した貧乏人の子は、

友情と執念に突き動かされ、

とうとう友達を救う方法を見つけ出す。

救い出した後、金持ちの家の財産は二分され、

2人とも金持ちになって、その後も仲良く暮らした。
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起承転結は?

旅に出た金持ちの子と貧乏人の子が、宿に泊まる。

金持ちの子は、そこで不思議な術で馬にされてしまい、旅から脱落……。
友達を救うためにあちこち歩き回る主人公(貧乏人の子)。

そこへ不思議な雰囲気のおじいさんが現れ、

友達を救う方法を教えてくれる。

主人公のチャレンジ開始。
ついに、術を解くための“茄子”を手に入れ、

友達(金持ちの子)を救い出す主人公。
2人とも金持ちになって、仲良く暮らした。

このストーリーのポイントは?

まず、登場するのは、

2人の男の子。

 

それぞれ特徴があって、

1人はお金持ち。もう1人は貧乏人。

……「アンバランス」ですね。

 

人は、こうしたアンバランス状態が、

バランスのとれた状態になることを、無意識のうちに求めます。

 

最初の時点で、

読者(聞き手)は、自然と貧乏人の子に“肩入れ”します。

(……そういうものです。)

 

案の定、不幸は、金持ちの子に起こり、

貧乏人の子は、1人になります。

 

この物語は、

2人が旅に出るシーンが、起承転結でいう「起」になりそうですが、

違います。

 

宿のおかみさんの美しくも奇妙な儀式があり、

それを経て、

金持ちの子が旅から脱落するところが、

物語のスタートです。

(現に、2人の本来の出発地点や、旅の目的もぼやかしています。)

 

この物語の面白いところは、主人公のアクションの一つひとつが、

つっかかり、つっかかりしつつも、

スムーズに進んでいくところでしょう。

 

どういうことかと言うと、

 
友達を起こして知らせねばと思うのに……

→眠くなって泥のように眠り込んでしまう
そのモチ食うなよと小さな声で教えるのに……
→それが聞こえないのか、友達はモチを食べてしまう

どんなに探しても7つ身のついた茄子は見つからない……

→ナス畑を探し回り、3日目にようやく見つける

馬になっている友達は、4つまでは茄子を食べるが、あとは首を振って食べきらんと言うも……

→無理やり口に押し込んで食べさせる

 

……どうですか?

この、正解が目の前にあるのに、

毎回毎回すぐには思い通りにいかない感じ。

 

でも、

都合よくラッキーを掴み、運命を切り拓くシーンもあります。

 

貧乏人の子は夜眠れんという言葉のある通り……

→1人だけ起きて囲炉裏の部屋を覗く


男の子はすがりつきたい気持ちになって、じいさまにたずねると……

→じいさまは「よしよし教えてやろう」と答えてくれる

 

どうです?

この「運命」に導かれている感じ…。

 

人生そのものじゃないですか?


物語つくりのテクニックとしても、非常に勉強になりますね。

決して、すんなりとは、次のシーンに進まないんですよ。

 

先のイメージ(バランスのとれた状態)を抱かせ、

「最後はおそらく友達を救うんだろうなぁ」

という予想をさせつつ、ヤキモキさせつつ……、

 

読者(聞き手)の集中力を途切れさせず、つないでいくんですね。

 

……うん、よくできてる。


おっとっと、

あと、ここにも触れておかなきゃいけません。

 

宿のおかみさんの、深夜の不思議な儀式について。

 

創作者観点で見ると、ここでは、

物語を先に進めるために「金持ちの子を変身させる何か」

が生まれれば何でもよかったのですね。

 

それを「モチ」に定め、

……そうすると、モチの原料は、です。

 

不思議な人形は、囲炉裏の中で、モチを、

米から、しかも田植えから始めて作ります。


この時の儀式の様子・雰囲気が

この物語の“色”を見事につくりあげています。

 

2人の出発地点を物語の「起」とせずに、

片方の脱落を「起」とする…

 

しかも、

こんな妙なところで趣向を凝らし、

物語の“色”を作ってしまう……

 

何とも高等テクニックじゃないですか。

(私のような昔話好きには、本当に)シビれます……

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このストーリーの伝えるメッセージは?

「人生はストーリーである」と、

以前、このブログで書かせていただきましたが、


この物語などは、まさに人生を表しています。

 

人には「向上心」があります。

それは、「希望」と言い換えてもいいでしょう。

 

この物語では2人の男の子が出てきますが、

私は、「金持ちの子」と「貧乏な子」とは、

1人の人間に内在する2つの要素を指しているように思います。

 

「貧乏な子」は、

「金持ち」である自分も内在していたのです、最初から。

 

自分の“半分”が明らかに欠損した時、(金持ちの友達が脱落した時、)

主人公の本当の旅が始まります。

 

これは、この時点で、

「生きる目的が明確化した」ということ。

 

あるいは、「自我の芽生え」とも言えるかもしれません。

 

人は何かを手に入れようとして努力しますが、

それは「自分と縁のないものを手にいれる」というものではないんですね。

 

そうではなく、

元から持っていたものを取り戻す……

あるいは、

より自分らしくなるために、その「何か」を手に入れようとする……

のだと思います。

 

あなたがそれを「やりたい」のは、

多分、あなたがもっとあなたらしくなるから。

 

あなたがそれを「欲しい」のは、

多分、あなたがそれを持つと、もっとあなたらしくなるから。

 

だから、あなたは、それに向かって努力をしているのです。


私、この物語は、

人が、失われた半身を求めて旅をする話

だと思うのです。

 

だから、宿のおかみさんに「悪意」がないように

描かれていると思うのですね。

(しかも、この“儀式”は、どこか美しい。)

 

人の悪意によって、自分の半身が奪われるわけではない……

それもまた、いいじゃないですか。

 

旅は、いえ、人生は、

けっして思い通りにはいかないけれど、

きっと、いい結末へ、ちゃんと「導かれて」いきます……。

 

それを信じられる気がしますね、この物語に触れると。

 

……というわけで、

名作昔話を掘り下げる、第2回目『旅人馬』でした。

何らかのお役に立てば幸いです。


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