SC序論②/5|昔話を例にしたストーリーによる思考整理

ストーリーで思考を整理するとは?

悩み、不安、迷いとは、思考が行き詰まり、もはや何をどう考えればいいかのすら分からなくなってしまった……という状態です。

こんな時には、思考を整理すること、つまり「第三者視点で自分が置かれた状況を俯瞰してみること」が大切です。

そのためには、SC序論①で紹介した「思考整理メモ」を書く時のように、頭の中からひとまず、予想、思惑、期待、感情的な言葉を取り除き、事実だけを見つめる必要があります。

さらにその事実を時系列に並べると、そこに見えてくるのはあなた自身のストーリーです。

ここでは、ストーリーによって思考を整理するという考え方について、詳しくご説明いたします。

ストーリーのすじだけを語る“昔話”

事実のみを抜き出したストーリー、そう言葉で聞いてもピンとくる方は少ないかも知れませんが、これを説明するのに、“昔話”ほど優れた題材はありません。

昔話は、重要なことだけ、すじだけを一直線に語ります。

細かな心理描写もありませんし、人物の事情、性格などにも直接的にはほとんど触れません。

ではここで、一遍の短い昔話を紹介してみましょう。

きっと、「事実のみを抜き出して思考を整理する」ということが体感できることと思います。

チョイスしましたのは、ご存知の方も多いと思われる『どうもこうも』という昔話です。

読み聞かせや語りの会では、大人にも子供にも絶大な人気のあるお話です。

 

昔、あるところに、〈どうも〉という刀使いの名人がいた。

となり村に、〈こうも〉という刀使いの名人がいた。

ある時、2人は出会って、腕試しをしようということになった。

名人が切れば、人の首もまたくっつくという話だ。

じゃあやってみよう、ということになって、〈どうも〉が〈こうも〉の首をぴょんっと切った。

首がころころと転がっていった。

のっけたら、またぴしゃっとくっついて生き返った。

さすが名人だ。

今度は、〈こうも〉が〈どうも〉の首をぴしゃっと切った。

首がころころと転がっていった。

のっけたら、またぴたっとくっついて生き返った。

こっちもさすが名人。

でも、これじゃ勝負にならない。

そこで2人は、いっぺんに相手の首を切ったらどうなるだろうと考えて、「いち、にい、さん」でお互いの首を切った。

2つの首がころころと転がっていった。

今度は、のっけてくれる人がいなかった。

それで2人は顔を合わせて、「これじゃ、どうもこうもならん」って言った。

それ以来、日本ではどうしようもない時に、「どうもこうもならん」と言うようになったということだ。

シンプルだからこそ自分の頭で考えられる

この話を単純に「おもしろい」と思えたら、あなたにはある意味、ピュアな心が残っています。

子供は、大抵この話でケラケラ笑います。

大人の中にはたまに、「なんて酷い話なんだ」と思う人もいるようですね。

(とかく大人は、“余計なこと”を考えがちです。)

確かに、よくよく考えると恐ろしい話ではありますが、 首を切ったと言っても血も流れませんし、体の上に載せたらまるで切紙細工のようにピタッとくっついてしまいます。

“極端に語るが、その実態は語らない”というのが、昔話の重要な文法です。

もっと言えば、痛かった、悔しかったといったような感情描写も一切ありません。

まさに、事実だけ

「どうも」と「こうも」のどちらに肩入れ入れすることもなく、完全なる「第三者視点」で、シンプルに話のすじだけが次々に展開していきます。

また、昔話ですから、基本的に作者と言われる人はいません。

したがって、作者が聞き手(読者)に対して「どう感じて欲しいか」という意図もないのです。

受け止め方は、あなた次第。

そう、自分の頭で考えるのです。

悩み、不安、迷いについての考え方も、これと非常に似ています。

第三者視点で俯瞰し思考を整理することがなぜ重要かと言えば、それは、シンプル化することで自分の頭で考えやすくし、自分の力で突破口を見つけるためなのです。

ストーリーで思考を整理する、その一端が分かっていただけたでしょうか?

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※厳密に言えば昔話とて、「こんなふうに感じて欲しい」という意図を持って語られますが、シンプルな語り口であるため、受け取り手には想像の余地が多くあり、その人独自の想像の世界が広がります。

 

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