SC所論❶/3|ストーリーの力が糸口となる

ストーリーと第三者視点

もうひとつのシリーズ記事である【SC序論】のでは、「思考整理メモ」という方法をご紹介しています。

これはかんたんに言うと、自分自身の手によって人生をストーリー化してみる方法のことでした。

そうすることで、自分に起きていることを第三者視点で冷静に見ることができ、問題解決の糸口が見えてきます。

ではそもそも、なぜ人生をストーリー化すると第三者視点が得られるのでしょう?

ここではこれについて、もう少し踏み込んで説明していきたいと思います。

ストーリーなら混沌を言葉できる

ちょっぴり小難しい話になりますが、人間にとって、

・〈体〉と〈心〉
・〈外界〉と〈内界〉
・〈意識〉と〈無意識〉

といったものは、それぞれ切っても切り離せない間柄でありながら、はっきりと区別されています。

だからこそ、人は、“表層の悩み”によって、“深層世界に落ち込んでいる悩み”を感じないようにして生きることができるのです。

もう少し噛み砕いて言うと、例えば、

「あの学校に行きたい!」
「あの会社に入りたい!」
「もっとモテたい!」
「もっとお金が欲しい!」

と思っているのにちっとも物事がうまく進まない……、そんな悩みを持つ方は多いと思いですよね。

でも人は、その悩みがどこからきているかはっきり分からなくても、とりあえず、目の前で起きている現象や、自分を取り巻く環境に対処することで生きていくことができるんです。

多くの人がそうですし、それはそれでいいのです。

第一、悩みの根本の原因って、内面の深いところ、言わば“混沌”の中にありますから、それをかんたんに言葉にすることなどできません。

ですから、いちいち立ち止まってもいられないし、とりあえずやり過ごすしかありません。

ですが、悩みの根本の原因を表出させ、表層の意識とつなげ、心を一つの全体とする唯一無二のものがあります。

それが、物語(ストーリー)です。

人生をストーリーとして捉えれば、本来言葉にできないような混沌を言葉にするという“不条理”が可能になるのです。

人は他人のストーリーを参考にしたい

「他人のことはよく分かるのに、肝心な自分のことは分からない」なんてことはよくあります。

これは自然の摂理のようなもので、例えば、人間の目は外を見るのは得意ですが、自分の鼻はなかな見ることができません。

また、人は自分の欠点には気付きにくいのに、他人の欠点であればすぐに気付きます。

それらと同様に、自分の人生をストーリーとして見てみようとしても、ストーリーとしては当然未完で、これから先どうなるかも分かりませんから、なかなか難しいものです。

ですが、すでに完結している物語がありますね。

伝記などはまさしくそうです。(伝記は故人の生涯を完結したストーリーとして扱っています。)

あのような“他人の物語(ストーリー)”は、私たちが人生を生きる上で、非常に有効な参考材料となりえます。

すなわち、私たちは“自分のストーリー”を生きるために“自分以外の人のストーリー”を必要としているのです。

昔話を模範とする人生のストーリー化

私は、人生を生きるための参考材料としてのストーリーとして、一番分かりやすく、最も適した例は「昔話」だと考えています。

昔話がなぜ古代より口から口へ伝えられ、現代にまで残っているかというと、それはそこに秘められているメッセージを人間の魂(本能)が求めていたからです。

昔話の大きな特徴は、基本、三人称であることです。

言うなれば、“外から見たように語っている”ということです。

(昔話が一人称で、たとえば「オッス、おら桃太郎!」から始まることなんであり得ません。)

さらに言えば、登場人物が何かを思ったり感じたりということもありません。

細かい描写は抜かれていて、すじだけが書かれています。

そのため昔話は、聞く人や読む人に「このように感じて欲しい」というような押し付けがましいメッセージを持ちません。

もし、そこにメッセージめいたものがあるとするなら、それは聞く人が“自発的”に汲み取るもの。

おそらく、自分の頭で考える力を育むのに、昔話ほど適したものはないでしょう。

以上を踏まえて、私はこのように考えています。

人間の人生も、昔話のように三人称ですじだけのストーリーに変換すれば、まるで他人の人生のように俯瞰してみることができるのではないでしょうか?

そうすれば自ずと、悩み、不安、迷いの突破口が見つかり、いつだって冷静で最適な判断をくだすことができるのではないでしょうか?

ストーリーの持つ力

人は毎日、ストーリーを紡ぎながら生きています。

人が好んで見聞きする小説も映画も、果ては世間話だって、すべてはストーリー。

それらは人の興味を引くよう練り上げられて人に伝えられているものなので、実際の人間のストーリーよりもいくらか明確ですし、明晰です。

そんなストーリーに触れることは、娯楽としてとても楽しいことですが、それによって人は、自分を見直したり人間を見直したり世界を見直したりすることができています。

これがまさに、ストーリーの持つ力

人は、こうしたあらゆるストーリーに囲まれて暮らし、それらを受け止めながら、自分の人生というストーリーを作っているのです。

あなたの人生は今、そのストーリーの中でどんな場面にあるでしょうか?

どんな状況や境遇にあっても、それと似たようなストーリーが世の中にすでにあります。

(本当の意味で自分の人生を客観視すると、変な話ですが、どこかで見たストーリーにすら見えてくるものです。)

それらに自分の人生を重ねてみると、「あぁそういうことか!」と、思いがけない打開策に気付くことができます。

ストーリーの持つ力は、まさに無限大です。

けっして他人からのアドバイスなどではなく、自分の人生の)ストーリーこそが、あなたにとっての問題解決の糸口になり得るのです。

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